提灯・灯篭・行燈の違い
提灯・灯篭・行燈は現在まで継承されてきた、日本の伝都的な照明器具ですが、違いを明確に説明するのは至難の業です。このページでは3つのアイテムの違いや用途についてご紹介します。
提灯・灯篭・行燈は何がどう違う?
しっかりと見比べれば違いがわかる、提灯・灯篭・行燈の特徴や豆知識をご紹介します。
【提灯(ちょうちん)】
提灯は持ち手が付いて携行できる、折りたたみ式の照明器具です。
竹を細く割って、輪やらせん状にした枠に和紙や布を貼り、底に蝋燭を立てて光源にします。
上下に口と底部分を取り付けているので、使用しないときには上下方向に折りたためるのがポイント。
軽量で手で持ったり吊り下げもできる持ち手が付いているので、持ち運び用にとても便利で、現代における懐中電灯の役割を果たしていました。
提灯は主に3つの部品によって構成されています。
- 火袋:提灯のメイン部分で螺旋状に巻いた骨の周りに、和紙や障子紙などを張ります。周囲を照らす内部の光源を風から守ります。
- 骨:火袋の形を決める提灯の骨格部分で、竹ひごや木材などで作られています。巻骨と呼ばれる輪に組んだものを組み合わせて作る手法や、らせん状に巻いて使う一条らせん式と呼ばれる手法があります。
- 加輪:骨を固定するための丸い形の金具で、火袋の上下の口を挟むようにして取り付けます。一般的には、竹でできた曲げわっぱやプラスチックなどが使わることが多いですが、中には高級感・特別感がある漆塗りのものや、装飾文様が施されたものも存在します。逆に、簡易的な提灯には付属しない場合もあります。
【灯篭(とうろう)】
主に屋外環境で使用される灯篭は伝統的な照明器具の1つです。
石や木、金属などの材料から作られ、仏教とともに中国大陸から伝わったとされ、異体字による灯籠・燈籠などの漢字表記も多く存在します。
風景や植物・動物など、様々な図柄が装飾されます。一般的には、底部が広くなり上部に向かって細くなる形状をしています。
灯篭は主に6つの部品によって構成されています。
- 地輪:灯籠の全てを支える基礎で台座のような役割。石やコンクリートなどで地面にしっかり固定されます。
- 火袋:灯篭の主要部位でロウソク等を入れて火を灯す部分。灯篭の種類に合った様々な形状の飾り窓が付きます。灯火が風で消えないようにするために竹・木・石・金属などの枠に紙や布を張ったアイテムもあります。
- 笠:屋根となる部位で雨等から火袋を守ります。主流の四角・六角形以外にも様々な形状が存在します。
- 玉(宝珠):笠の上部に配置する玉ねぎのような形状の装飾品。
- 受(受鉢):火袋を支える受け皿のような役割をしている部位。少し広くなっていて、最下部の地輪と対になる形状をしていることが多いです。
- 柱:受と地輪を繋ぐパーツ。円筒状のものが一般的ですが、種類が豊富で四角・六角・八角形のものも見られます。元々高さが低い雪見型の灯篭などでは省略されることもあります。
【行燈(あんどん)】
行燈の構造はとてもシンプルです。
火皿に菜種油や魚油などの油脂を注ぎ、中に入れた木綿の芯やロウソクなどに着火して光源とします。
光源が風で消えないように、四角形や六角形の形をした、竹・木・金属・プラスチックなどで作られた枠組に和紙や布を貼った箱を火皿に被せれば行燈の完成です。
光源が和紙や布を通ることで、淡く温かみのある光となって人とスペースをやさしく包み込んでくれます。 また、取っ手や吊り紐が箱の上部に付いているので、吊り下げもしやすく、素材も木などを使用した軽量なものが多いため、誰でも簡単に持ち運んで移動をさせることができます。
形状は様々で、縦長の箱状や円筒形の他、置き型や掛け型などの用途別にも細分化されています。 パネルの和紙や布部分に日本の伝統的な文様や絵画・文字などを施した、個々に独自の雰囲気をまとった行燈は特別な空間演出に欠かすことができません。
提灯・灯篭・行燈は何時どのように使うの?
提灯・灯篭・行燈それぞれの主な活用方法や由来がわかれば、個別のアイテムに対しての理解もより深まるはずです。
【提灯の使い方や活用場面】
江戸時代頃から庶民の間に広まった提灯は、現在でも私たちの生活に深く根付いています。
紐に吊るしたり、物に引っ掛けた提灯を毎日のように飲食店の看板や装飾品として街中で目にするだけではなく、日本全国各地で毎年開催されるお祭りには必要不可欠です。
他にも葬儀をはじめとした冠婚葬祭や、日本の伝統行事でも活躍する提灯は、日本文化を象徴する最重要アイテムのひとつと言っても過言ではありません。
【灯篭の使い方や活用場面】
お寺などの日本庭園や神社、墓前において、景観や雰囲気を演出するために灯篭は設置されます。
また、灯篭はお祭りや式典・行事などの特別な日にも使われ、来賓の道案内や、亡くなった人々への供養としても明かりが灯されます。
様々な形状やデザインの灯篭が存在するので、目的・用途や庭園の雰囲気に合った製品を選ぶことができます。
【行燈の使い方や活用場面】
行燈の漢字表記からも推測できると思いますが、元々は持ち運び用の照明器具として中国で使われていました。
その後日本に伝来し、室内用の照明器具や、祭り神輿・行列の先導、神社・お寺の境内を照らすための特別感のある照明として使われるようになりました。
現在では、日本の美しい風習や伝統文化を象徴する必需品として、伝統行事や特別な式典などで神聖な空間や和の雰囲気を演出する際に広く用いられています。
まとめ
提灯も灯篭も行燈も各々特徴や役割が異なり、独自固有のアイテムであるということを少しだけでも理解していただけたでしょうか?
各アイテムの特徴や魅力を少しでも知ることが、オリジナル提灯製作をする際の何か小さなヒントとなれば幸いです。