暖簾(のれん)の発祥地と歴史
暖簾(のれん)は、居酒屋・お蕎麦屋・ラーメン店・お寿司屋などの飲食店をはじめ、旅館などの商業施設、自宅のインテリアなど、私たちの生活の中の様々な場面で目にする機会があります。
そんな、誰もが知っているであろう暖簾ですが、発祥地や歴史についても知っているという方は少ないのではないでしょうか?
このページで、のれんの発祥地や歴史に加え、雑学・豆知識も併せて知ってもらうことで、より一層のれんに親しんでいただければと思います。
暖簾(のれん)の発祥地
まず最初に、のれんの発祥地についてお話ししようと思います。
日本での暖簾の発祥地は、諸説あるのですが、一般的には京都とされています。
現存する資料では、保延年間(1135~1140年)の作とされる『信貴山縁起絵巻』に今日の三垂れの半暖簾と同様のものが描かれており、この記述が最も古いものとされています。
参考サイト:信貴山縁起(wikipedia)
当初は、日差し・風・塵などをよける、人目をよける、などを目的に農村、漁村、山村の家々の開放部に架けられていました。
無機質な白無地や色無地が主で、そこに、文様やメッセージを入れるようになったのは鎌倉時代以降のことと言われています。
暖簾(のれん)の起源
のれんの起源は、中国の仏教禅書「勅修百丈清規」に由来するとされています。
禅宗と共に中国から日本に輸入されてきた暖簾は、前出の『信貴山縁起絵巻』の他、平安末期(治承年間:1177~1181年)の作とされる『粉河寺縁起絵』の中にも描かれていることから、平安初期あるいは奈良時代頃には既に存在していたのではないかと推察されています。
当時、禅寺では禅宗の用語で、簾(すだれ)のことを涼簾(りょうれん)と呼び使用されており、寒期には隙間風を防ぐための、簾に綿布を重ねて隙間を覆う垂れ幕を使用していたと言われています。この垂れ幕のことを「暖簾(のんれん)」と呼んでおり、禅寺以外の住宅でも使われ、親しまれていくうちに徐々に発音が変化し、「のうれん」となり、現在の「のれん」という発音に定着していったということです。
暖簾(のれん)の普及
当初、のれんは、白無地や色無地のものが多く、日差し・風・塵や人目をよける目的として、農村・漁村・山村の家々の開放部に架けて使用されていました。
やがて鎌倉時代に入ると、のれんに家紋などの模様を入れるようになり、商家でも使用されるようになります。
室町時代になると、ジャンルを問わずあらゆる商家が、それぞれ独自の意匠を入れる様になり、単純なモノの形や記号なども入れるようになり、メディアとしての機能を担うようになるのです。
桃山末期頃から江戸時代には、庶民の識字率が高まったこともあり、文字が入った暖簾も増えてきます。更に寛永・延宝時代(1624~1681年)頃にはデザイン面も進化し、屋号・業種・商品目などの文字を染め抜いた、白抜きの暖簾も登場。広告媒体・商家の象徴としての役割も果たすようになり、無くてはならない必須アイテムとして定着し、現在にまで至ります。
暖簾(のれん)の色の歴史
街中には色取り取りの暖簾が、店舗の象徴として掛けられていますが、のれんの色にも意味づけがあるということはご存知でしょうか?
元来、のれんは藍染めが大半を占めていました。昔は染色技術も低く、生地などの材料も限られていたのです。しかし、染色技術や生地は歴史とともに進化を遂げ、様々な色の暖簾を製作できるようになると、やがて業種ごとに主に4色で色分けがされるようになります。
のれんの色を業種別に色分けすれば、お客さんがのれんをパッと見ただけで、何を取り扱っている店舗かを判断できるようになるのでとても便利です。このようにして、のれんは私たちの生活により一層馴染み、店舗のシンボルとして欠かせないアイテムになっていくのです。
紺・藍色
酒造業や呉服商など、堅実な商売を意味する紺・藍色は多くの商家が使用する色です。一度染めによる薄藍色から繰り返し何度も染め重ねた濃紺まで種類は様々です。藍の香りは虫が嫌がって寄り付かないため、虫除けの効果もあります。
柿色
高級料亭や小料理屋が使用する柿色は、「かちん染め」と呼ばれる技術から生まれる赤茶色のことを指します。元々は吉原・島原などの花街では、遊女の最高位の太夫がいる店や、太夫を招くことのできる揚屋(高級料亭)だけに許された色だったということです。時を経てやがて高級感を意味する色として認識されるようになりました。
白色
砂糖を多く使用するということから、菓子商が使用するようになった白色の暖簾。清潔感があるということから広く食べ物を扱う飲食店でも使用されるようになりました。また、昔は砂糖が薬として使われていたという節があることから、薬種商でも多く使われていました。
茶色
元々は煙草商、薬種商、種苗商が使用していた、少々黄みがかった茶色暖簾。特に江戸時代には煙草商の象徴として認知されていました。しかし、時代とともに暖簾の色に対する約束事も薄れ、呉服商・菓子商・茶舗などでも広く使用されるようになりました。
様々なサイズ・形状・素材の暖簾(のれん)
日本の歴史や文化とともに、のれんは利用者の需要に合わせて、様々な進化を遂げてきました。
サイズ・形状・素材が異なった暖簾は無数に存在しますが、その中でも特に需要の高い暖簾をピックアップしてご紹介します。
半のれん
標準とされる布丈(約113cm)の半分、約56.7cmの丈の長さの暖簾を半のれんと呼びます。
居酒屋・そば店・寿司店・ラーメン店などの飲食店をはじめ、家庭でも玄関や台所、トイレなどの入口にも設置することが多く、私たちも目にする機会が多い馴染みのある暖簾です。
店舗の入口に掛けても、外から店内の様子を見ることができるので、お客さんが入店しやすくなるだけでなく、通行人へのアピールとしても効果的です。
参考ページ:店頭のれん
長のれん
長のれんは丈の長さが約1.6mで、標準とされる布丈(約113cm)よりも約50cm程長い暖簾です。
銭湯やお手洗いの入口や、店内でスタッフエリアを区切るための間仕切りや目隠しの他、日除けの役割も果たします。
店内やご自宅の装飾として使えば、伝統的な「和」の雰囲気を演出することができます。
参考ページ:間仕切り・目隠しのれん
水引きのれん
水引きのれんは、丈の長さが約40cmほどの布を間口いっぱい、軒先に設置できる横に長いのれんです。
飲食店内のカウンターと調理場の間や、入り口が横長の店先にもサイズに合わせて製作・設置することができます。
「水引」とは本来、贈答品や封筒などに取り付けられる「飾りの紐」のことで、間仕切り・目隠しと言うよりは、装飾用として重宝される暖簾です。
参考ページ:水引きのれん
日除け暖簾(太鼓暖簾)
日除けのれんは、切り込みのない大風呂敷のような一枚布の上下にチチをつけ、上端を軒先に、下端を道路側にせり出させて固定します。
店頭を日差しや風から守ったり、見た目も大きいため、店舗の看板としての役割も果たします。
ラーメン店・居酒屋などの飲食店の他、酒店・陶器店・石材店まで、幅広い業種で利用されています。
日除けのれんが風に煽られると、パターンと音をたてることから別名「太鼓のれん」ともいわれています。
参考ページ:日除けのれん)
縄のれん(紐のれん)
い草や麻を素材に編まれて作られる「紐のれん」や「縄すだれ」とも呼ばれる縄のれん。
自然素材の温もりと透ける涼感を併せ持ち、独特の存在感と風格があり、どこか親しみや懐かしさを感じさせてくれる暖簾で、居酒屋・菓子屋・麹屋などの様々な店舗で使用されています。
空間を柔らかく仕切り、和の雰囲気を演出する装飾アイテムとしても活躍します。
参考ページ:縄のれん
地域特有の暖簾(のれん)
古くから日本全国で親しまれてきた暖簾は、地域ごとにも独自の進化を遂げてきました。
以下でご紹介している地域特有の暖簾以外にも、掘り起こしていけば、日本全国には一般的には知られていないけれど、素敵な暖簾がまだまだ存在するかもしれないので、興味を持った方は色々と調べてみるのもオススメです。
■地域特有の暖簾
- 花嫁のれん…加賀地方(石川県)
- 加賀暖簾…加賀地方(石川県)
- 祭り暖簾…本荘地区(秋田県)
- 珠のれん…小野市(兵庫県)
まとめ
古くから日本人の生活を支えてきた暖簾の歴史を知る事は、実は日本の文化を知るという事とイコールなのかも知れません。
普段何気なく目にしている暖簾も、時代と共に紆余曲折を経て現在に至るという事を学べば、より一層のれんに親しみを感じるはずです。
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